「小石投げの名人 タオ・カム」
『子どもに語るアジアの昔話2』こぐま社

毎年、木々の葉が青々と茂り 陽射しが強くなってくると、この おはなしを語ります。
特に、地元の小学校4年生のクラスでは、必ず語ることにしています。

どうして4年生かというと…
もちろん、この おはなしが4年生くらいに ちょうど良い内容だということもありますが、
主人公 タオ・カムが 10歳なのです。

昔話の登場人物は、「おじいさん」「おかあさん」「男の子」「娘」などと表現されることが多く 年齢はわかりませんが、珍しく タオ・カムは、「まだ十にしかなりませんでしたが…」と ちゃんと年齢がわかっています。

「みんなと同い年の男の子が主人公よ。」と話してから 語り始めると、より自分に引き付けて
おはなしを聞いてくれるようです。

今年も、4年生のクラスに語りました。
タオ・カムは 小石を投げる名人で、必ず 的に命中させることができます。
一枚の葉っぱに 次々と小石を飛ばし、動物の形をした穴をあけることができた場面では、
子どもたちは、「おー! すげー!」と言いながら、目を丸くして聞いてくれています。

貧しかったタオ・カムが、小石投げの技のおかげで 王様の役に立ち、御殿に住めるようになったという結末。
おはなしの最後「タオ・カムは、そののちも、ずっと御殿に住むことをゆるされ、暮らしにこまることはありませんでした。」の「でした。」を 私が言い終わると同時に、子どもたちは、満面の笑顔で、待ってました! とばかりに 間髪を入れず拍手してくれました。

この拍手は、語り手の私に対してではなく、「タオ・カム、すごい! タオ・カム、よくやった!」の拍手。
子どもたちは 晴れ晴れとした顔で、「先生! タオ・カムって すごいんだよー!」と 教室の後ろで聞いてくださっていた先生に報告していました。
なんと かわいい子どもたち!

ラオスの美しい風景が 目に浮かぶ、清々しいおはなしです。
また、自分が恵まれていない部分や 出来ないことばかりに 目を向けて悔やむのではなく、
出来ることを 一生懸命にやることで 未来が開けることを 改めて教えられます。

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